放浪の向こう側 Another World

海外放浪記/洋楽翻訳/個人コラム

静寂を聴くということ The Sound of Silence - Simon & Garfunkel - 洋楽の和訳

この曲の和訳は冬まで待とうと思っていた。

サイモン&ガーファンクルといえば、冬だ。

木枯らしの中、石畳の路地裏をコートの襟を立てて歩く冬の散歩道。

 

でも見つけてしまったんだ。

素晴らしいカバーを。だから季節を前倒しで和訳することにした。

 

シアトル出身のNouelaというシンガーで

声だけではなく、息づかいまでもが美しい。

そして控え目なピアノの伴奏。

文字通り、静寂という名の音のなかで歌っているんだ。

 


Nouela The Sound of Silence

 

Hello darkness, my old friend 

暗闇よ、こんにちは 私の古い友人よ

I've come to talk with you again 

また君と話をするためにやって来たよ

Because a vision softly creeping 

Left its seeds while I was sleeping 

なぜなら僕が寝ている間に

空想がゆっくりと這うように種を落とし

 

And the vision that was planted in my brain

そして僕の頭の中に植えつけていったから

Still remains 

Within the sound of silence 

そして静寂の音の中で

今も息づいている

 

In restless dreams I walked alone

休まることのない断続的な夢の中で

僕は独りで歩いていた

Narrow streets of cobblestone 

狭い石畳の道を

Neath the halo of street lamp

 街頭の光の下を

I turned my collar to the cold and damp 

僕は寒さでコートの襟を立てたよ

When my eyes were stabbed by the flash of a neon light

ネオンの光が僕の目を突き刺す 

That split the night 

それは夜の闇を引き裂いて

And touched the sound of silence 

そして静寂という名の音に触れたんだ

 

And in the naked light I saw 

むき出しの光の中で僕は見た

Ten thousand people, maybe more

一万人、いやそれ以上の人々を 

People talking without speaking

彼らは自らの声をあげることなく対話をし

People hearing without listening

耳を傾けることなく、ただ聴いているだけ

People writing songs that voices never shared

そして彼らが書いている歌詞は、永遠に分かち合うことのない声なんだ

And no one dared 

Disturb the sound of silence

でも、その静寂の音に誰も一石を投じようとはしないんだよ

 

Fools, said I, you do not know

愚か者よ、君は何も分かっていない

Silence like a cancer grows

静寂とは癌のように肥大していくものなんだ

Hear my words that I might teach you 

君を導くであろう僕の声を聞いてくれ

Take my arms that I might reach you

君に差し伸べる僕の腕を頼ってくれないか

 

But my words, like silent raindrops fell

でも僕の言葉は、静かな雨の雫のごとく

And echoed in the wells of silence 

静寂という名の壁にこだまするだけ 

 

And the people bowed and prayed 

To the neon god they made

その人々は、彼らがこしらえた偶像の神に跪き、祈ったが

And the sign flashed out its warning 

その神が告げたのは警告の言葉だった

In the words that it was forming 

And the sign said, the words of the prophets are written on the subway walls 

お告げによると、予言の書は地下鉄の壁や

And tenement halls 

集合団地に書かれているんだと

And whispered in the sounds of silence 

静寂の音の中で囁いていた。

 

【補足】

曲の冒頭は、断片小説のような出だしで

映画のワンシーンのような風景が浮かび、詩的な歌という印象を受ける。

しかし、それは単なる序章に過ぎず、本題は静寂(The sound of silence)の中で繰り返し語られている社会に対する警告だろう。

 

英語圏ウィキペディアによると、この曲の起源については明らかにはなっておらず、いくつかの捉え方がある。

その一つに、この曲はケネディ暗殺事件についてコメントしたものだという分析があるが、それに対してサイモン氏は、「この曲は僕が21歳の時に作ったもので、それはケネディ暗殺事件が起こるずっと前のことだ」と言及している。

そして「この曲はバスルームで作ったんだ。集中度を高めるために、電気を消してね。僕はよくバスルームで曲を作ってたよ。タイルが音を反射して、エコーがかかる感じがいいんだ。」とのこと。

 

一方、相方のガーファンクル氏は「この曲は、現代における人々のコミュニケーション力の欠乏、それは国際的なコミュニケーションとかそういうレベルではなく、もっと基本的な感情のコミュニケーションだ。それが無いために、お互いを愛することができずにいる」とまとめている。

 

また、最近のインタビューの中でサイモン氏は

「21歳のあなたは、この歌詞をどのようにとらえていたか?」という質問に

「分からない」という一言でまとめている(笑)

 

聞こえるもの、目に見える世の中に溢れかえっているものではなく

静寂の音を聴け、ということだろうか。