放浪の向こう側 Another World

海外放浪記/洋楽翻訳/個人コラム

ブランキージェットシティをこよなく愛していた15歳の自分が、三十路手前になった自分を導いた話

 

「僕の心を取り戻すために」会社を辞めた


Blankey Jet City 僕の心を取り戻すために

 

大学を卒業後、英語を使った仕事をしたいという漠然とした動機で

地元企業に就職した。

将来のビジョンなんて、とくに持ち合わせていなかった。

アメリカ留学から帰国したばかりの私は

とにかく英語だけが武器で、これで世の中を渡っていけるのだと

甘い考えしかなかったのだ。

ただなんとなく就職した先は、ただなんとなく時間が流れ

稼いだお金も、ただなんとなく消えていった。

 

組織に適合していくために、周囲の求める人物像にシンクロしていく。

より社会性のある大人を目指して

社会というものが自分を塗り替えていく。

 

これは少しずつ自分を失っていく作業なんだと

気づいた頃には、もう社会人になる前の自分が

はっきりと思い出せないようになっていた。

 

ふと立ち止まってみても、一体これから自分がどこへ向かっていくのか、

何をしたいのか分からずに途方に暮れた。

 

考えてみるも自分の心の声は遠く、聞こえることもなく

また、目の前の課題を事務的に片づけていくだけの日々が続いていく。

 

しかし、唯一自分を知っている感覚が私の中に残っていた。

社会における役割を担う前の自分だ。

 

それは15歳の頃の自分だった。

 

15歳の時

私はブランキージェットシティという日本のロックバンドに出会い

衝撃をうける。

それは魂を射抜くような音楽だったからだ。

 

世界の果てにある

行ったことはないはずなんだけど、

なんだか知っている風景。

彼らの音楽を聞いていると、そんな世界が広がって

心象風景にぴったりと寄り添うのが不思議だった。

 

退廃的だけど、美しくて

野生的だけど、どこか神秘的で

ブランキーの音楽は、言うまでもなく芸術なんだと思う。

彼らは音楽という刹那的なアートを創造していた。

 

もう一度、その音楽に身を委ねてみた。

重低音が腹の底から響き

魂が少しずつ、ビートを刻みだすように

眠りから覚めていった。

 

15歳の自分に手を引かれるように30歳手前の自分は

ただ何となく生きる、人口無機質の世界、意識からの脱出を図る。

会社を辞めた。そしてオーストラリアに行く。

そこから冒険の旅が始まったのだった。

 

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